経理を効率化しようとすると、会計ソフトを変えたり、新しいシステムを導入したりすることから考えがちです。
しかし、小規模な事業では、システムを変える前に日々の経理の流れを整理するだけでも、負担を減らせることがあります。
特に最初に見直したいのは、次の3つです。
- 資料がどこから入ってくるか
- 事業のお金がどう動いているか
- 月次で何を確認するか
この記事では、個人事業主・小規模法人の経理改善で、まず確認したい3つの流れを整理します。
1. 資料の入口を整える
経理に時間がかかる原因は、会計ソフトへの入力そのものとは限りません。
その前段階で、
- 領収書が財布や机に残っている
- 請求書がメール・紙・クラウドなど複数の場所にある
- どの資料を処理したのか分からない
- 月末になってから必要な資料を探している
という状態になっていることがあります。
この場合、入力方法を効率化する前に、経理に必要な資料がどこへ集まるのかを決める方が効果的です。
「受け取った後にどこへ置くか」を決める
紙でも電子データでも、重要なのは保管場所を増やしすぎないことです。
例えば、
- 紙の領収書は決めた場所へ集める
- メールで受け取った請求書は決めた保存先へ移す
- クラウドサービスから取得する請求書は取得方法を決める
- 会計ソフトへ添付する資料と、別途保管する資料のルールを決める
など、自社で続けられる方法に統一します。
大切なのは、最新のツールを使うことではなく、「この資料はどこにある?」と探す時間を減らすことです。
電子で受け取った資料は保存方法も確認する
請求書や領収書を電子データで受け取る機会も増えています。
電子取引データについては電子帳簿保存法の保存ルールがあり、消費税の仕入税額控除についても一定の帳簿・請求書等の保存が必要になるため、単に「PDFをどこかに置いておけばよい」と考えず、現在の保存方法を確認しておくことが大切です。
経理改善では、こうした法令上必要な保存と、日々の使いやすさを両立できる形にしておきます。
2. 事業用と私用のお金の流れを分ける
次に見直したいのが、お金の流れです。
個人事業主や小規模法人では、
- 事業の支払いを個人のカードで行う
- 個人的な買い物を事業用カードで支払う
- 現金で事業経費を支払う
- 事業用口座と生活用口座の間で頻繁に資金を移動する
といったことが起こりやすくなります。
処理自体はできても、取引のたびに「これは事業か、個人か」を判断する必要があるため、経理の確認作業が増えます。
事業用の口座・カードを決める
経理をシンプルにするためには、できる範囲で、
- 事業用の銀行口座
- 事業用のクレジットカード
- 個人用の銀行口座・カード
を分けておくと管理しやすくなります。
特に法人では、会社と代表者個人は別の存在なので、会社のお金と個人のお金を分けて管理することが重要です。
個人事業主でも、事業用の入出金をある程度まとめておけば、会計ソフトとの連携や取引確認がしやすくなります。
現金取引は必要な分だけにする
現金を使ってはいけないわけではありません。
ただ、銀行口座やカードと違って取引データが自動的に残らないため、記録や資料との照合が必要になります。
キャッシュレスで問題なく支払える取引については、事業用カードや口座に寄せることで、手入力や確認を減らしやすくなります。
混ざった場合の処理方法を決めておく
完全に分けていても、立替や誤ったカード利用が発生することはあります。
そのたびに処理方法を考えるのではなく、個人事業であれば事業主貸・事業主借、法人であれば役員との貸借など、状況に応じた処理方法をあらかじめ決めておきます。
目指すのは「絶対に混ぜないこと」ではなく、混ざったときにも迷わず処理できる状態です。
3. 月次確認の型を決める
資料を整理し、お金の流れを分けても、入力しただけでは経理は完成しません。
重要なのは、帳簿の数字が実際の状況と合っているかを定期的に確認することです。
小規模な事業であれば、最初から多くのチェック項目を作る必要はありません。
まずは、次のような基本項目から始めます。
銀行・カードの残高を確認する
会計ソフト上の残高と、実際の銀行口座やクレジットカードの残高・利用状況を確認します。
差がある場合には、
- 未取り込みの取引
- 二重登録
- 連携エラー
- 処理時期のずれ
などがないかを確認します。
売掛金・未払金などの残高を見る
売掛金や未払金は、残高の合計額だけでなく、何が残っているのかを確認します。
例えば、
- 入金済みなのに売掛金が残っていないか
- 未入金なのに売掛金が消えていないか
- 支払済みなのに未払金が残っていないか
- 何か月も動いていない残高がないか
などを確認します。
月次で中身を確認しておけば、決算になってから一年分を調べ直す負担を減らせます。
売上・経費の漏れや大きな変動を見る
最後に、売上や経費全体を眺めます。
- 売上の計上漏れがないか
- いつも発生している経費が抜けていないか
- 前月と比べて大きく増減した科目がないか
- 普段とは違う取引が正しく処理されているか
といった観点で確認します。
すべての仕訳を一件ずつ見直すのではなく、残高や変化から確認すべき取引を絞ることがポイントです。
経理改善は「入力を速くする」だけではない
経理改善というと、自動入力やAI、クラウド会計などに注目しがちです。
もちろん、こうしたツールは有効です。
しかし、資料の入口やお金の使い方が整理されていない状態で自動化しても、最後の確認作業がなかなか減らないことがあります。
経理全体を、
資料が入る → 取引を記録する → 残高を確認する → 必要な修正をする
という流れで考えると、どこがボトルネックになっているのか見つけやすくなります。
新しいシステムを導入するのは、その後でも遅くありません。
3つを一度に変える必要はない
現在の経理が大きく乱れている場合に、すべてを一度に変えようとすると、かえって運用が続かなくなることがあります。
例えば、
- まず事業用の口座・カードを整理する
- 次に資料の保存先を決める
- その後、月次で確認する項目を決める
というように、自社で困っている部分から順番に改善して構いません。
最適な順番も事業者によって異なります。
資料が散らばっている会社と、売掛金の残高が合わない会社では、最初に直す場所は違います。
クラウド会計や自動化は「流れを整えた後」に効きやすい
経理の基本的な流れが整理できると、クラウド会計の機能も活用しやすくなります。
例えば、
- 銀行・カード連携
- 自動仕訳ルール
- 請求書との連携
- 領収書・請求書データの取り込み
- 取引先・品目・タグなどの管理
といった機能です。
何を自動化するかを先に決めるのではなく、現在どこに手作業や確認の負担があるのかを見てから使う機能を選ぶ方が、無理のない運用になりやすくなります。
自動仕訳ルールについては、別記事「自動仕訳ルールの見直しで、経理チェックの手間はどこまで減らせる」でも詳しく解説しています。
経理改善で大切なのは、続けられる仕組みにすること
経理は、一度きれいにすれば終わる仕事ではありません。
毎月同じように資料が集まり、取引が処理され、残高を確認できる状態を続ける必要があります。
そのため、複雑なルールを作るよりも、
- 迷わず資料を置ける
- 事業のお金を追いやすい
- 確認する項目が決まっている
- 問題があったときにすぐ見つけられる
という状態を作ることが重要です。
「毎月頑張って経理を終わらせる」のではなく、同じ流れで自然に処理できる状態を目指します。
山川喜彰税理士事務所では経理の流れから確認します
山川喜彰税理士事務所では、個人事業主・小規模法人を中心に、クラウド会計を使った経理運用についてもご相談いただけます。
新しいシステムを導入することを前提にせず、まず、
- 資料がどこから集まっているか
- 銀行・カード・現金をどう使っているか
- 現在どのように会計ソフトへ入力しているか
- 月次で何を確認しているか
- どこに手作業や確認の負担があるか
を整理します。
その上で、必要に応じてクラウド会計の設定や自動仕訳ルール、管理方法などを見直します。
「経理を楽にしたいけれど、何から直せばよいか分からない」という段階でも構いません。
クラウド会計サポートでも、現在の運用を確認しながら改善方法を整理しています。
まとめ
個人事業主・小規模法人の経理改善で、最初に見直したいのは次の3つです。
- 資料の入口を整える
- 事業用と私用のお金の流れを分ける
- 月次確認の型を決める
最初から会計ソフトを変更したり、大きなシステムを導入したりする必要はありません。
まず現在の流れを整理し、どこで資料を探しているのか、どこで判断に迷っているのか、どこで数字が合わなくなっているのかを確認します。
その上で必要な部分だけを改善していく方が、小規模な事業では続けやすい経理につながります。
経理をどこから改善すればよいか整理したい方へ
山川喜彰税理士事務所では、個人事業主・小規模法人の現在の経理方法を確認し、
資料の入口・お金の流れ・月次確認など、負担になっている部分から整理します。
大きなシステム変更を前提にせず、現在の環境でできる改善からご相談いただけます。
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