「今日は特にご相談はないのですが」
顧問先との打合せは、この一言から始まることがよくあります。
けれども、その後に事業の近況を伺っていくと、ご本人が相談事項だと思っていなかった話の中に、確認した方がよいことが含まれている場合があります。
税理士との打合せは、相談したいことを用意してから臨む場だけではありません。この記事では、実際にどのような会話から確認事項が見つかるのかを、具体例で整理します。
税理士との打合せでは、何を話せばいいのか
相談事項を用意しないといけない、と思われがち
税理士との打合せというと、「聞きたいことをまとめてから臨むもの」というイメージを持たれている方が多いように感じます。
そのため、「今月は特に変わったことがなかったので、打合せはなくても大丈夫です」というお話をいただくこともあります。
もちろん、聞きたいことが決まっているのであれば、それをお伺いするのが一番早い進め方です。
ただ、相談事項がないことと、確認した方がよいことがないことは、同じではありません。
実際の打合せは30分〜1時間程度が多い
当事務所の場合、月次の打合せは30分から1時間程度になることが多いです。決算前や、事業に大きな変化があったときなど、内容によっては2時間近くになることもあります。
とはいえ、長い時間お話しすることそのものに意味があるとは考えていません。
短く終わる月は短く終わります。大事なのは、確認しておいた方がよいことを、その場できちんと伺えているかどうかです。
試算表の数字を確認するだけが打合せではありません
数字は「起きたことの結果」でしかない
月次の打合せでは、試算表を見ながら売上や利益の状況を確認します。
ただ、試算表に出てくる数字は、その月に会社で起きたことの結果です。数字そのものは、何が起きてそうなったのかまでは教えてくれません。
例えば外注費が前の月より増えていたとして、試算表から分かるのは「増えた」ということだけです。
- 新しく人に頼み始めたのか
- 従来の取引先への支払いが重なっただけなのか
- 今後も続く支払いなのか
こうしたことは、お話を伺わないと分かりません。
数字の背景にある出来事を聞くと、確認事項が見えてくる
そして、背景を伺っていく中で、税務上確認した方がよいことが出てくる場合があります。
数字を確認して終わりにするのではなく、その月に会社で実際に起きていることと結び付けて見ていく。これが、月次の打合せで行っていることです。
毎月の数字と事業の動きを一緒に確認していく継続的な支援については、税務顧問サポートのページで詳しくご説明しています。
何気ない会話から確認事項が見つかる例
ここからは、実際にどのような会話から確認事項が出てくるのか、代表的な例をご紹介します。
なお、以下はいずれも「このような会話から確認事項が出ることがある」という例です。実際の取扱いは契約内容や個別の事情によって変わりますので、ここでは結論を断定せず、確認が必要になる場面としてお読みください。
「外注の方に報酬を払いました」
ご本人としては、単なる近況報告です。
ただ、この一言からは、いくつか確認しておきたいことが出てきます。
- どのような内容の仕事に対する報酬か
- 支払先が個人の方か、法人か
- どのような取り決めで仕事をお願いしているか
支払先が個人の方の場合、報酬の内容によっては、支払う側が所得税を差し引いて納める手続が必要になることがあります。一方で、同じ「外注」という言葉で呼んでいても、内容によっては必要にならない場合もあります。
また、働き方や指示の仕方によっては、外注ではなく給与として扱うべきではないか、という論点が出てくることもあります。
いずれも、「外注費を払った」という一言だけでは判断できません。実際の内容を伺って、はじめて確認すべき点が見えてきます。
「従業員が退職しました。退職金も支給しました」
退職に関するお話も、近況として出てくることが多い話題です。
このお話からは、次のようなことを確認させていただくことがあります。
- 退職金をどのように計算して支給したか
- 退職される方から、必要な書類を受け取っているか
- 支給した際の手続がどうなっているか
退職金は、毎月の給与とは別の考え方で税額を計算します。そして、退職される方から所定の書類を提出していただいているかどうかによって、差し引く税額の考え方が変わることがあります。
支給した後で「その書類は受け取っていませんでした」と分かると、対応の選択肢が限られてしまう場合があります。
退職金を支給する場面は、日常的に発生する手続ではないため、事前に把握していないことも珍しくありません。だからこそ、支給した直後にお話を伺えるかどうかが大きく影響します。
「開業するときにインボイス登録しました」
開業時の届出の話の中で、この一言が出てくることがあります。
このとき確認させていただくのは、次のような点です。
- 登録したことで、消費税の申告が必要な立場になっていないか
- その前提で、日々の記録が残せているか
インボイスの登録をすると、それまで消費税の申告が必要なかった方でも、申告と納税が必要な立場になる場合があります。
そして、消費税は自分で計算して申告する税金です。ここは誤解されやすいところで、「税額は役所が計算して通知してくれるものだと思っていた」というお話を伺うこともあります。
住民税のように通知が届く税金もあるため、そう受け取られること自体は不思議ではありません。
ただ、この違いに気づくのが申告期限の直前になってしまうと、資金の準備が間に合わないことがあります。開業時の話題の中で確認できていれば、あらかじめ備えておくことができます。
「以前から働いていた人と結婚しました。今も働きながら経営会議にも出ています」
最後の例は、一見すると税務とはまったく関係のない近況です。
結婚のご報告として、雑談の中で出てくるお話です。実際、ご本人が税務の相談として話されることは、まずありません。
ただ、この状況からは、次のようなことを確認させていただく場合があります。
- どのような仕事をされているか
- 経営に関する決定にどの程度関わっているか
- 給与の決め方や支給の仕方が、これまでと変わっていないか
会社の経営に関わる立場にある方への給与は、一般の従業員への給与とは異なる取扱いになる場合があります。そして、その判断は肩書きだけで決まるものではなく、実際にどのような役割を果たしているかによって変わってきます。
取扱いが変わると決まっているわけではありません。確認した結果、これまでどおりで問題ない場合も十分にあります。
大事なのは、「結婚しました」という近況の中に、確認した方がよい論点が隠れていることがある、ということです。そして、それは会話をしていなければ、決算のときまで気づかれないままになります。
なぜ、こうした話は相談事項として出てこないのか
本人が「税務の話」だと思っていないから
ここまでの4つの例に共通しているのは、ご本人が税務の話をしているつもりがないということです。
外注の方に支払いをした。従業員が辞めた。開業のときに登録をした。身内が働いている。
どれも、事業をしていれば普通に起きることです。わざわざ税理士に相談することだとは思われません。
つまり、相談事項として挙がってこないのは、それが「相談すべきこと」だと認識されていないからです。知らなかったことが問題なのではなく、知る機会がなかっただけです。
だから、こちらから近況を聞く必要がある
このことが分かっていると、打合せでやるべきことは変わってきます。
「何かご相談はありますか」とだけ伺うと、ご本人が税務の話だと認識していることしか出てきません。
そうではなく、最近あったこと、事業の変化、人の出入り、取引先とのやり取りの変化などを伺っていく。その中から、確認した方がよい点をこちら側で拾う。
これが、顧問という関わり方でできることの一つだと考えています。
なお、初めて税理士に相談される場合は、事業の概要や今困っていることを事前に整理しておいた方が、話が早く進みます。この点については「税理士に初回相談する前に整理しておきたい5つのこと」で整理しています。
一方で、継続的にお付き合いのある中での打合せは、その都度整理していただかなくて構いません。すでに事業の状況を把握しているので、近況を伺うところから始められるためです。
大きな相談より、小さな変化のほうが重要なこともある
設備投資・役員報酬・法人化は、相談していただける
金額の大きい話や、明らかに税金に関係しそうな話は、多くの場合ご相談いただけます。
- 大きな設備を購入しようと思っている
- 役員報酬を変更したい
- 法人化を考えている
これらは「税理士に相談することだ」と認識されている話題です。ご相談いただければ、その場で一緒に検討できます。
人の出入り、取引先の変化、支払い方法の変化は、相談されにくい
一方で、次のような変化は相談事項として挙がりにくい傾向があります。
- 人を新しく頼むようになった、辞めた
- 取引先との取引条件が変わった
- 支払い方法や請求の流れが変わった
- 家族が事業を手伝うようになった
- 新しいサービスを使い始めた
こうした変化は、金額が小さかったり、日常業務の一部だったりするため、わざわざ報告することだとは思われません。
けれども、こうした小さな変化の中にこそ、税務上確認しておいた方がよいことが含まれている場合があります。
「特に相談がないから打合せしなくていい」とは限らない
ここまでを踏まえると、次のように言えます。
相談事項が思い浮かばないときこそ、最近あったことを話していただく意味があります。
こちらから伺えば、ご本人が税務の話だと思っていなかったことが出てきます。そして、その中に確認しておいた方がよい点が含まれていることがあります。
定期的に話せる関係があると、判断が早くなる
後から分かるより、その場で確認できる方が選択肢が多い
税務の取扱いには、あらかじめ手続をしておく必要があるものや、支給する前に決めておく必要があるものがあります。
決算のときにまとめて確認すると、すでに終わってしまったことについて、「こうしておけばよかった」という話になってしまうことがあります。
同じ内容でも、起きた直後に確認できていれば、選べる方法が残っている場合があります。
定期的にお話しする機会があることの意味は、ここにあります。
毎回説明し直さなくてよくなる
もう一つは、事業の背景を毎回説明し直さなくてよくなることです。
どういう取引先がいて、どういう流れで仕事をしていて、どういう事情があるのか。これを共有できていると、近況を一言お聞きしただけで、確認すべき点にたどり着けます。
当事務所では代表税理士が直接対応しており、途中で担当が変わることがありません。継続してお話を伺えることが、この記事で書いてきたような確認のしやすさにつながっています。
この点については「税理士本人が直接対応する事務所を選ぶメリット・注意点」でも整理しています。
山川喜彰税理士事務所が打合せで大切にしていること
税理士本人が直接お話を伺います
打合せは代表税理士の山川喜彰が担当します。伺った内容をそのまま税務の判断につなげられるため、確認から回答までのやり取りが短くなります。
専門用語を使わずに説明します
税務や会計の言葉をそのままお伝えしても、判断の材料にはなりません。
「何をどうすればよいのか」「今のままだと何が起きるのか」を、できるだけ普通の言葉でお伝えするようにしています。
数字だけでなく、実際の事業の動きを伺います
試算表の説明だけで終わらせず、その月に何があったかを伺います。
必要なことをきちんと確認するために、内容によっては時間が長くなることもありますが、それは結果であって目的ではありません。話す時間の長さではなく、確認しておくべきことを漏らさないことを大切にしています。
まとめ
- 税理士との打合せは、相談事項を用意してから臨む場だけではない
- 試算表の数字は「起きたことの結果」であり、背景を伺わないと確認事項は見えてこない
- 外注への支払い、従業員の退職、インボイス登録、身内の方の入社など、何気ない近況の中に確認した方がよい論点が含まれていることがある
- 相談事項として挙がってこないのは、ご本人がそれを税務の話だと思っていないため
- 大きな相談は相談いただけるが、人の出入りや取引条件の変化は相談されにくく、むしろこちらに論点が多い
- 「特に相談がないから打合せしなくてよい」とは限らない
- 起きた直後に確認できると、選べる方法が残っていることがある
毎月の数字と、事業の動きを一緒に確認したい方へ
山川喜彰税理士事務所の税務顧問サポートでは、毎月の試算表を確認しながら、その月に会社で実際に起きていることを伺い、確認した方がよい点をお伝えしています。
代表税理士の山川喜彰が直接お話を伺います。
「特に相談したいことがない」という状態でも構いません。
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