従業員を1人・2人と雇い始めると、毎月の給与計算が経理の中で一番締め切りの厳しい作業になります。支給日は動かせないのに、勤怠の集計が遅れる、住所や扶養が変わったことを後から知る、入社した人の書類がそろっていない。給与計算そのものより、計算に必要な情報がそろわないことで止まることが多いものです。この記事では、少人数の会社が給与計算のために毎月そろえる情報と、受け渡しの決め方をお伝えします。
結論:「毎月のもの」「変わったときのもの」「入退社のもの」に分けて渡す
- 毎月のもの: 勤怠(出勤日数・労働時間・残業・欠勤など)、手当や控除の変更
- 変わったときのもの: 住所・扶養・振込先・給与額など、従業員の情報の変更
- 入社・退職のもの: 入社時の申告書類、退職日と最後の給与の情報
- 受け渡しは、締め日・渡す日・支給日を決めて、毎月同じ流れで行う
- 変更は「気づいたときにすぐ」共有する。月の途中でもかまわない
毎月そろえるもの
| 情報 | 内容の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 勤怠 | 出勤日数、労働時間、残業・深夜・休日の時間、欠勤・遅刻・早退、有給休暇の取得 | 締め日で区切った集計を渡す |
| 手当・控除の変更 | 通勤手当の変更、立替の精算を給与と一緒に払う場合の金額 | 立替精算は給与と分けて扱う方が分かりやすい |
| 一時的な支給 | 賞与、臨時の手当 | 支給日と金額を早めに共有する |
社長だけの会社で役員報酬を毎月同じ金額で払っている場合は、勤怠の集計は通常いりません。それでも、住所や扶養の変更、社会保険料の変更は起こるため、「変わったときのもの」は同じように共有します。
変わったときに共有するもの
- 住所: 住民税や年末調整に関わります
- 扶養(家族の状況): 結婚・出産・家族の就職などで扶養の人数が変わると、毎月の源泉所得税が変わります。変更があったときは、その後最初に給与を受ける日の前日までに、変更の内容を書いた扶養控除等申告書を出してもらいます
- 振込先の口座
- 給与額・役員報酬額の改定: 役員報酬は、事業年度の途中で変えると税務上の扱いに影響することがあるため、変える前に確認してください
- 社会保険料の変更: 標準報酬月額(保険料の計算の基になる月額)が変わったときは、控除する保険料が変わります
- 住民税の金額: 市区町村から届く特別徴収税額の通知で、年に一度金額が切り替わります(通常、6月に支払う給与から翌年5月に支払う給与まで、その通知の金額を毎月差し引きます)
入社・退職のときにそろえるもの
入社したとき
- 給与所得者の扶養控除等申告書(最初の給与の支払日の前日までに出してもらう)
- マイナンバー、住所、生年月日、振込先
- 雇用の条件(給与額・手当・支給日・締め日)
- 年の途中で入社した人は、前の勤め先の源泉徴収票(年末調整で使う)
退職したとき
- 退職日、最後の給与の支給日と金額
- 年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に給与所得の源泉徴収票を渡す
- 社会保険料をどの月の分まで控除するか(退職日によって変わる)
入退社にともなう社会保険・雇用保険の手続きは、給与計算とは別の手続きです。誰が行うかを、入社・退職が決まった時点で確認しておきます。
実務で確認する順番
- 締め日・渡す日・支給日を決める
動かせない支給日から逆算して、勤怠の締め日と、給与計算の担当者へ渡す日を決めます。3つの日は会社ごとに違ってかまいません。
- 毎月渡す勤怠の形をそろえる
毎月同じ表で、同じ項目を渡すようにします。
- 変更の連絡先を1つにする
住所・扶養・振込先などの変更を、誰に・どう伝えるかを従業員にも伝えておきます。
- 給与計算の結果を支給前に確認する
支給額・控除額が前月から大きく変わっていないか、変わった理由が分かるかを見ます。
- 源泉所得税と住民税を納める
源泉所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納めます。納期の特例の承認を受けている会社(給与の支給人員が常時10人未満)は、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日までにまとめて納めます。
- 会計ソフトの預り金を確認する
源泉所得税・住民税・社会保険料の預り金が、納付のたびに減っているかを確認します。預り金は合計ではなく内容ごとに分けて見て、月末の残高を翌月の納付額と照らします。たとえば、住民税の預り金の月末残高は、原則として翌月10日に納める特別徴収の金額(通知書の月額の合計)と一致するはずです。源泉所得税は次に納める納付書の金額(納期の特例を受けている場合は、半年分の累計)、社会保険料は保険料の納入告知額のうち従業員負担分と比べます(当月の給与から前月分を差し引いている場合は、月末には納付が済んでいて、残高がおおむね0になるのが正常です)。納付したのに残高が減っていない、前の月の分が残り続けている、残高がマイナスになっている、といった場合は、納付の登録漏れや科目の付け違いを疑います。
社会保険料は、原則として対象の月の翌月末日までに納めます。当月の給与から前月分の保険料を控除する形が一般的です。
よくあるつまずき
扶養や住所の変更を、年末調整で初めて知る
年の途中の変更を年末調整でまとめて直すと、毎月の源泉所得税の差額が大きくなります。変わったときに、その都度共有してもらうのが一番の近道です。
入社した人の扶養控除等申告書がない
扶養控除等申告書を出していない人の給与は、源泉所得税を税額表の「乙欄」で計算することになり、申告書を出した場合よりも高い税率が適用されます。入社したら、最初の給与の前に出してもらいます。
勤怠の締めが遅れて、支給日に間に合わない
支給日から逆算して、勤怠を渡す日を決めておきます。遅れそうなときは、分かっている範囲だけでも先に共有してもらうと、確認の時間を確保できます。
山川事務所ではどこまで支援するか
当事務所では、給与計算をオプション(別料金)でお受けしています。料金は3名まで月10,000円、4名以降は1名あたり月1,500円です(税抜・2026年5月26日以降に新規契約のお客様の基本料金)。給与計算には、給与額の計算・明細作成に必要な範囲の確認を含みます。源泉所得税の納付に関する対応や、年末調整(別料金)もお受けしています。
一方、給与計算の料金には、勤怠の集計、社会保険・雇用保険の手続き、入退社の手続き、労務相談は含みません(必要に応じて別途ご相談ください)。勤怠資料そのものの作成は会社側で行っていただくのが基本ですが、給与計算をお引き受けする場合や経理の流れを整える際には、勤怠の受け渡し方法や集計方法を一緒に整理することがあります(勤怠管理用のExcelと集計の仕組みを整えた例を、対応事例で紹介しています)。社会保険の手続きはご自身で行っていただくか、社会保険労務士へのご依頼をお願いしています。
毎月の会計データの確認では、源泉所得税・住民税・社会保険料などの預り金の残高も見ています。給与の仕訳をお客様側で入力している場合も、ずれがあれば事務所側で修正または確認します。
勤怠や、扶養・住所・振込先の変更、入退社といった情報は、事務所からは知ることができないため、会社側から共有していただくことが前提です。事務所側で推測して給与計算や仕訳に反映することはしていません。
勤怠や変更の情報をいつまでにお渡しいただくかは、事務所で一律の日を決めているわけではありません。会社ごとに、締日・給与日・月次の確認日から逆算して、毎月の提出期限を決めます。
まとめ
- 給与計算が止まる原因の多くは、計算に必要な情報がそろわないこと
- 「毎月のもの」「変わったときのもの」「入退社のもの」に分けて渡す
- 締め日・渡す日・支給日を決め、毎月同じ流れにする
- 扶養の変更や入社時の扶養控除等申告書は、給与の前に出してもらう
- 源泉所得税は原則翌月10日まで(納期の特例は年2回)、社会保険料は原則翌月末日まで
- 勤怠の集計や社会保険の手続きは、給与計算とは別。誰が行うかを先に決める
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