インボイス制度が始まってから、請求書を「発行する側」の準備はひととおり済ませた会社が多いと思います。一方で、請求書を「受け取る側」の確認は、会計ソフトに任せたままになっていないでしょうか。
受け取った請求書にインボイスとしての記載がそろっているか、相手が登録している事業者かによって、消費税の計算で差し引ける金額が変わります。さらに、登録していない事業者からの仕入について差し引ける割合は、令和8年(2026年)10月から変わります。
この記事では、請求書を受け取る側が毎月確認しておきたいことを、順番にお伝えします。
結論:取引先ごとに「登録の有無」を一度確認し、毎月は新しい取引先と例外だけを見る
- 取引先ごとに、登録番号があるか(インボイスを発行できる事業者か)を一度確認して、会計ソフトの取引先情報に残す
- 毎月は、新しい取引先・記載が足りない請求書・登録のない取引先からの仕入を中心に確認する
- 登録のない取引先からの仕入は、差し引ける割合が段階的に下がる。令和8年10月から割合が変わる
- クレジットカードの利用明細は、原則としてインボイスの代わりにならない
インボイス(適格請求書)の記載事項
受け取った請求書がインボイスとして扱えるかは、次の記載で確認します。
- 発行した事業者の名称と登録番号
- 取引の年月日
- 取引の内容(軽減税率の対象品目がある場合はその旨)
- 税率ごとに分けて合計した金額と、適用される税率
- 税率ごとの消費税額
- 受け取る側(自社)の名称
小売店や飲食店などが発行するレシート(簡易なインボイス)は、税率か消費税額のどちらか一方の記載でよく、自社の名称もなくてかまいません。
毎月確認する順番
その月に初めて出てきた取引先を確認する
新しい取引先からの請求書は、まず登録番号の有無を確認します。登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索して、実際に登録されているかを確かめられます。
確認した結果は、会計ソフトの取引先情報に登録番号として残しておきます。次の月からは、同じ確認を繰り返さずに済みます。
記載が足りない請求書を探す
登録番号はあるのに税率ごとの消費税額がない、日付がない、といった請求書は、発行元に再発行をお願いするか、扱いを確認します。
登録のない取引先からの仕入を確認する
個人の外注先や小さな取引先の中には、登録していない事業者(免税事業者など)もあります。こうした相手からの仕入は、会計ソフトで「適格請求書でない」ことが分かる区分や設定にしておきます。
カード払い・ECサイトの購入は、請求書を別に保存する
クレジットカード会社の利用明細は、一般的にインボイスには当たらないとされています。カードで払った場合も、お店のレシートや、ECサイトからダウンロードできる請求書を別に保存します。詳しくは「法人カードを作った最初の月に決めておくこと」をご覧ください。
登録のない取引先からの仕入:経過措置の割合が変わる
登録のない事業者からの仕入は、本来は消費税の計算で差し引けませんが、制度が始まってからしばらくの間は、一定の割合を差し引ける経過措置があります。国税庁の案内によると、令和8年度の税制改正で、この経過措置の期限が2年延びたうえで、割合が次のように見直されました。
| 期間 | 差し引ける割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以降 | 差し引けない |
どの割合を使うかは、決算期や課税期間の始まりではなく、その仕入をした時期で決まります。国税庁のQ&Aでは、商品の仕入は原則として引渡しを受けた日、サービスの提供を受けた場合は原則としてそのサービスがすべて終わった日で判断するとされています。たとえば9月21日に始まり10月20日に終わったサービスは、10月20日の仕入となり70%を使います。同じ期間の商品の仕入なら、9月30日までに引渡しを受けた分は80%、10月1日以後の分は70%です。
また、一つの登録のない事業者からの仕入の合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分にはこの経過措置を使えません。この上限は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
実務で気をつけたいのは、会計ソフトの設定や自動仕訳のルールが、改正後の割合に合っているかです。お使いの会計ソフトの案内を確認し、10月以降の取引で割合がどう入るかを、最初の月に一度見ておくと安心です。
少額の仕入の特例
一定規模以下の事業者(基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)は、税込1万円未満の仕入について、インボイスの保存がなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで消費税を差し引けます(少額特例)。対象は令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う仕入です。
1万円未満かどうかは、商品1つごとではなく、1回の取引の合計額(税込)で判定します。
このほかにも、請求書等を受け取るのが難しい取引として、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで認められるものがあります。小さな会社で出てきやすいのは、次のようなものです。
- 3万円未満の電車・バスなどの公共交通機関の運賃
- 3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入
- 郵便ポストに差し出す、切手だけで支払う郵便
- 従業員に支給する、通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当
いずれも、帳簿に一定の事項を記載しておくことが前提です。
よくあるつまずき
- 登録番号を最初の1回しか確認していない:取引先が途中で登録をやめる(登録の取消し・失効)こともあります。公表サイトでは登録年月日に加えて取消年月日・失効年月日も公表され、取消し・失効のあとも7年間は掲載されるため、取引した時点で登録があったかを確かめられます。長く続く取引先も、ときどき公表サイトで確認します
- 自動仕訳ルールで、登録のない取引先まで通常の区分で処理している:初めての取引先は自動に任せず、最初に人が確認します(自動化しても人が確認するところ)
- カードの利用明細だけを保存している:レシート・請求書を別に保存します
- 経過措置の割合が変わることを知らずに、10月以降も80%のまま処理している
山川事務所ではどこまで支援するか
- 税務顧問の月次の確認で、消費税の区分を確認しています。明細の情報だけではインボイスの有無や税率が分からないことがあるため、証憑も確認します
- 初めての取引先は、自動の処理に任せきりにせず、内容を確認します
- 登録のない取引先からの仕入として処理されているものも、必要に応じて相手の登録状況を確認します
- 請求書・領収書を集めて共有していただくのはお客様、月次の確認は事務所という分担が基本です。何の支払いかを事務所側で推測して処理を決めることはせず、証憑や帳簿で内容が分からないものはお客様に確認します(工程ごとの分け方)
- 令和8年10月の割合変更については、すべての会社で一律に設定を変えるのではなく、取引先の登録状況や使っている会計ソフト、自動仕訳のルールなどを見て、必要な箇所を確認します
まとめ
- 取引先ごとに登録番号の有無を一度確認し、会計ソフトに残す
- 毎月は、新しい取引先・記載が足りない請求書・登録のない取引先からの仕入を見る
- 登録のない取引先からの仕入は、令和8年10月から差し引ける割合が変わる
- 会計ソフトの設定や自動仕訳のルールが改正後の割合に合っているかを確認する
- カードの利用明細とは別に、レシート・請求書を保存する
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