税理士を変えて、新しい税理士に帳簿を見てもらったら「残高が合わない」と言われた。前期の決算は終わっているはずなのに、なぜ合わないのか。どこまで直せばいいのか。引継ぎのあとに、こうした不安を持つ社長は少なくありません。
先に結論をお伝えします。
残高が合わないときは、すぐに調整の仕訳で消さず、まず前期の決算書・申告書・勘定科目内訳書と、会計ソフトの期首残高を照らし合わせます。そのうえで、売掛金・未払金など翌期に引き継がれる科目を取引先ごとにたどり、どこからずれたのかを確かめます。どこまでさかのぼるかは、金額の大きさと資料が残っているかで決めます。
残高が合わない理由は1つではない
残高が合わないと、前の税理士の処理を疑いたくなるかもしれません。ただ、実際の原因はいろいろです。
- 前期の決算で入った修正が、会計ソフトの側に反映されていない
- 期首の残高だけが、決算書と違っている
- 過去から残っている未払金や仮払金などの中身が、分からなくなっている
- 会計ソフトを移したときに、残高の引継ぎがずれた
- 会社側の入力や資料が足りず、そのままになっていた
誰のせいかを決めるより、どこで・いつからずれたのかを確かめるほうが、早く正しい数字に戻せます。
1. 前期の決算書・申告書・内訳書と、期首残高を照らす
最初に見るのは、前期の決算の資料と、今の会計ソフトの期首残高が合っているかです。
| 照らすもの | 見るところ |
|---|---|
| 前期の決算書(貸借対照表) | 科目ごとの残高が、会計ソフトの期首残高と一致しているか |
| 勘定科目内訳書 | 取引先ごとの残高が、会計ソフトの取引先ごとの期首残高と一致しているか |
| 法人税の申告書 | 決算書の数字と申告の数字につながりがあるか |
ここで合っていれば、ずれは当期に入ってから起きています。合っていなければ、前期の決算と会計ソフトの間でずれています。どちらなのかが分かるだけで、確かめる範囲がかなり絞れます。
2. 翌期に引き継がれる科目を中心に見る
すべての科目を同じ深さで見る必要はありません。中心に見るのは、残高が翌期に引き継がれる科目です。
- 売掛金・買掛金
- 未払金
- 預り金(源泉所得税・社会保険料など)
- 役員借入金
- 仮払金・仮受金などの仮の科目
これらは、取引先や中身ごとに残高を持っています。科目の合計だけでなく、取引先ごと・中身ごとに内訳書と照らすと、どこが合っていないかが見えてきます。
3. 期首から取引をたどる
ずれている科目が分かったら、期首から取引を順にたどります。
売掛金なら取引先ごとに「期首の残高 → 請求(発生)→ 入金」、未払金なら「期首の残高 → 発生 → 支払」を、月ごとに並べて追います。入金や支払が、どの請求・どの発生に対応しているのかを確かめていくと、ずれ始めた月が分かります。
当月の数字だけを見て原因を推測すると、外れることがあります。期首から順にたどるほうが、遠回りに見えて確実です。
4. 資料で確かめる。必要なら前の税理士にも確認する
ずれの原因が見えてきたら、会社に残っている資料で確かめます。請求書、通帳、カード明細、契約書などです。
前期の決算でどういう処理をしたのかが分からない場合は、前の税理士に確認してもらうこともあります。責める目的ではなく、処理の意図を知るためです。前期決算時の修正内容が分かる資料が残っていれば、この確認がしやすくなります。
どこまでさかのぼるか
古い残高を、何年もさかのぼって完全に追えるとは限りません。資料が残っていないこともあります。
そのため、どこまで確かめるかは、金額の大きさと、資料が残っているかを見ながら個別に決めます。小さな金額の古い残高を追うために、何か月も時間をかけるのが会社にとってよいとは限らないからです。
ただし、「合わないから、とりあえず雑収入や雑損失で消す」という処理は、最初からはしません。中身を確かめないまま消すと、本当は払うべき未払金や、回収すべき売掛金が残っていた場合に気づけなくなります。消した理由を、あとで説明することもできません。
調整が必要になった場合も、どう処理するかは中身と金額によって変わります。原因を確かめてから決めます。
当事務所で引き継ぐとき
当事務所で帳簿を引き継ぐときは、この記事の順番で確認しています。
- 前期の決算書・申告書・内訳書と、期首残高の照合
- 翌期に引き継がれる科目の、取引先ごと・中身ごとの確認
- 合わない科目は、期首から取引をたどって原因を確かめる
- どこまで確かめるかは、金額と資料の有無を見て会社と相談する
引継ぎの前に準備しておくものは税理士を変更するとき、何を準備すればいい?に、弥生会計を使っている場合のデータの渡し方は弥生会計のまま税理士を変えるとき、データはどう引き継ぐ?にまとめています。
まとめ
- 残高が合わない原因は1つではない。誰のせいかより、どこで・いつからずれたかを確かめる
- 最初に、前期の決算書・申告書・内訳書と期首残高を照らす
- 売掛金・未払金・預り金・役員借入金など、翌期に引き継がれる科目を取引先ごとに見る
- ずれている科目は、期首から取引をたどる
- どこまでさかのぼるかは金額と資料で決める。中身を確かめずに雑収入・雑損失で消さない
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